TEL:045-904-4618

COVID-19 予防における 口腔健康管理の重要性

☆新型コロナウイルス関連で大変興味深い記事を見つけたので以下に掲載しておきます。

COVID-19 予防における 口腔健康管理の重要性

慢性閉塞性肺疾患(COPD)や肺炎などの慢性呼吸器疾患、高血圧などの循環器疾患、および糖尿病やガンなどの基礎疾患を有するSARS-CoV-2感染者の重症化と死亡率が2 ~ 3倍高いことが報告されている。
どの疾患も歯 周病や口腔細菌との関連性が指摘されている疾患である。近年では、特に周術期における口腔ケアが誤嚥性肺炎などの術後合併症を減少させることから、多職種連携による口 腔健康管理が、広く行われるようになった。
実際に患者の気管支肺胞洗浄液に歯周病 原菌をはじめとする口腔細菌が多数検出されることや重度の歯周病患者は肺炎による死亡率が4倍近くも高まることなどが報告されている。
COPD は、これまで慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称で、現在世界の死因第 4 位となり世界的な対策 が急務となっている。日本では第10位(男性では第8位) であるが、潜在患者は 500万人以上いると考えられており、高齢化とともにさらなる患者の増加が懸念されている。COPDの増悪により炎症が進むと肺胞が破壊され、酸素の取り込みや二酸化炭素の排出能力が低下し、死に至る.最近、歯周病とCOPDとの関連についても興味深い報告が相次いで いる。喫煙者において重度の歯周病罹患者はそうでない人に比べ、COPD 発症のオッズ比が3.71であることや、本邦においても、喫煙などの影響を加味したうえでも、歯周病が重度な人は COPD を発症する割合が 3.5 倍も高いこと が報告されている。
さらに興味深いことに、歯周病治療 によりCOPDの病状が改善したとする報告もある。
しかし、口腔細菌がどのように肺炎とCOPDの発症や増悪に影 響を及ぼすのか?
EBM (根拠に基づく治療)を実践するうえでも重要となるそのメカニズムは、ほとんどわかっていない。SARS-CoV-2感染者において口腔細菌の誤嚥が起これば、続発性細菌肺炎 や呼吸器における炎症の増大が起こる可能性がある。
筆者らは、歯周病原因菌が気管支、肺胞および咽頭の上 皮細胞において、肺炎とCOPD発症の中心的役割をなす炎症性サイトカイン(IL-6 や IL-8 等)を強く誘導することを報告している。
興味深いことにその作用は、肺炎 起因菌(Streptococcus pneumonia)によるものより数倍以上高かった。
さらにマウスに歯周病原菌を誤嚥させた結果、肺や気管支のみならず、驚くことに血液中にまで大量のIL-6とIL-8が誘導されていた 。
歯周病原菌が全身で炎症性サイトカインの過剰産生(サイトカインス トーム)を引き起こし、肺炎とCOPDの発症と増悪に深く関与している可能性がある。このような状況がCOVID-19患者で起こると、SARS-CoV-2 による肺炎がより重症化する可能性も考えられる。
SARS-CoV-2 感染者における急性呼吸窮迫症候群 (ARDS)や敗血症ショックなどの重篤な呼吸障害は、死亡の主な原因であるが、ARDSを引き起こす要因として、ウイルスによる肺の直接的な傷害よりも、サイトカイン ストームの関与が指摘されている。特にIL-6上昇が死亡率と関連しており、過剰な炎症状態が予後不良に寄与すると考えられている。
そのため、COVID-19に対する治療薬としてウイルスを標的とするレムデシビルやアビガンなどの薬剤のほかに、宿主の炎症を抑える薬剤も注目されている。現在、IL-6の産生を抑える効果があり、主に関節リウマチの治療薬として使用されている抗IL-6受容体抗体薬トシリズマブや、サイトカインの産生シグナル(JAK)を標的とするJAK阻害薬ルキソリチニブなどの臨床試験が進んでいる。
また筆者らは、歯周病原菌が気管支上皮細胞におけるSARS-CoV-2受容体(ACE2)の遺伝子発現を誘導することを見出している。喫煙によりACE2の発現が高まることや、喫煙者では COVID-19が重症化しやすいことが報告されているが、口腔細菌の誤嚥によっても、SARS-CoV-2 の呼 吸器上皮細胞への感染性が高まる可能性が示唆される。歯周病原菌による呼吸器における炎症性サイトカイン産生とACE2発現の誘導を介して、歯周病がCOVID-19の重症化にも関与している可能性がある。
口腔衛生状態の管理により、誤嚥性肺炎やCOPDなど の慢性の肺疾患を予防することは、COVID-19 に対して抵抗できる体づくりにつながる可能性があり、たとえ SARS- CoV-2 に感染したとしても、重症化の防止につながるかもしれない。